
事業承継税制の要件とは?2026年最新の適用条件を解説
この記事の要点
- 会社・後継者・先代経営者の3区分すべての要件を満たす必要がある
- 特例承継計画の提出期限を過ぎると納税猶予割合が下がる一般措置しか使えない
- 適用後5年間は雇用8割維持など継続要件があり毎年報告が必要
事業承継税制の要件とは何か
事業承継税制を使うには、会社・後継者・先代経営者のそれぞれについて満たすべき要件があり、さらに都道府県知事の「認定」と税務署への「申告」という手続きを期限内に行う必要があります。要件を1つでも欠くと非上場株式にかかる贈与税・相続税の納税猶予は受けられないため、着手前に3区分すべてを確認することが欠かせません。
事業承継税制は、後継者が先代経営者などから非上場会社の株式等を贈与・相続で取得した際にかかる贈与税・相続税の納税を、一定の要件のもとで猶予・免除する制度です。中小企業の事業承継における税負担を大幅に軽減できる一方、要件が細かく、適用後も継続的な報告義務が課される点に注意が必要です。
会社に関する要件
事業承継税制の対象となる会社は、以下のような条件を満たす中小企業でなければなりません。
- 中小企業基本法上の中小企業者に該当すること
- 上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
- 資産管理会社(一定の要件を満たす場合を除く)に該当しないこと
- 従業員が1人以上いること(特例措置の場合は実質的に1人以上を確保できる体制)
- 総収入金額がゼロを超えていること
中小企業者の範囲は業種によって異なり、例えば製造業では資本金3億円以下または従業員300人以下、小売業では資本金5,000万円以下または従業員50人以下といった基準が設けられています。自社がこの範囲に収まっているかは、詳細を中小企業庁の公表資料で確認しておくと安心です。
資産管理会社に該当してしまう失敗例
実務でよくあるのが、賃貸用不動産の保有比率が高いために「資産管理会社」と判定されてしまうケースです。総資産に対する特定資産(現金・預貯金・有価証券・貸付金・不動産賃貸物件など)の割合がおおよそ70%を超える場合、原則として資産管理会社とみなされ、事業承継税制の対象外となります。ただし、常時使用従業員が5人以上いて事務所を賃借しているなど、一定の事業実態がある場合は例外的に対象となる余地もあるため、個別の資産構成を専門家と精査することが重要です。
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無料で記事を作る →後継者に関する要件
後継者側の主な要件は次の通りです。
- 会社の代表権を有していること
- 相続・贈与の時点で20歳以上(2022年4月以降は18歳以上)であること
- 役員等の就任から3年以上を経過していること(贈与の場合)
- 相続・贈与により、後継者と同族関係者で総株式数の過半数を保有すること
- 後継者が1人の場合は筆頭株主となること(特例措置では最大3人まで後継者指定が可能)
特例措置を利用する場合、後継者は最大3人まで指定でき、それぞれが代表権を持つ体制であれば、複数の後継者間で経営を分担しながら税制の適用を受けられます。ただし各後継者が10%以上の株式を保有し、かつ議決権の第1位から第3位までに入る必要があるなど、細かな条件が付されています。
先代経営者(贈与者・被相続人)に関する要件
先代経営者側にも以下のような要件があります。
- 過去に会社の代表権を有していたこと
- 相続開始または贈与の直前において、先代経営者と同族関係者で総株式数の過半数を保有し、かつ後継者を除いた同族内で筆頭株主であったこと
- 贈与の場合は、贈与時に代表権を有していないこと(役員として残ることは可能)
先代経営者が複数の場合、2代目以降の贈与者についても一定の条件下で対象となります。親族外への承継、いわゆる第三者承継においても制度の対象となり得るため、後継者候補が親族でない場合でも検討する価値があります。
特例承継計画の提出と適用期限に注意
2018年に創設された特例措置(特例事業承継税制)を利用するには、会社が「特例承継計画」を都道府県に提出し、確認を受けておく必要があります。この計画には後継者の氏名や承継時までの経営見通しなどを記載します。
提出期限や適用期限は制度改正によって変更される可能性があるため、現時点の最新スケジュールは必ず中小企業庁や所轄の税務署、認定支援機関で確認してください。期限を過ぎると一般措置(納税猶予割合が低く、対象株式数にも上限がある制度)しか使えなくなり、猶予される税額が数百万円から数千万円単位で変わることもあります。
適用後に求められる継続要件
認定を受けた後も、以下のような継続要件を満たし続ける必要があります。
- 承継後5年間は後継者が代表者かつ筆頭株主であり続けること
- 承継後5年間、雇用の8割以上を維持すること(特例措置では実質的に緩和措置あり)
- 5年間、毎年都道府県への年次報告と税務署への継続届出書の提出を行うこと
- 5年経過後も、3年に1回程度の継続届出書の提出が必要
雇用維持要件は一般措置では厳格に適用されますが、特例措置では要件を満たせなかった場合でも理由書を提出することで猶予が継続できる仕組みがあります。この違いを理解せずに一般措置で申請してしまい、後から雇用が8割を割って猶予が打ち切られるという失敗例も見られます。
要件確認から適用までの手順
実務上のおおまかな流れは以下のようになります。
1. 会社・後継者・先代経営者それぞれの要件を自社で仮チェックする
2. 認定支援機関(税理士・M&A仲介会社など)に相談し、特例承継計画を作成する
3. 都道府県庁へ特例承継計画を提出し、確認書を受け取る
4. 実際の贈与・相続を実行する
5. 都道府県知事の認定を受け、税務署へ納税猶予の申告を行う
6. 5年間の年次報告、その後は3年ごとの継続届出を行う
この手順は制度上おおむね共通していますが、会社の株主構成が複雑な場合や、資産管理会社に近い状態の場合は、事前準備に半年から1年程度を要することもあります。早めの着手が結果的に選択肢を広げることにつながります。
要件を満たせない場合の代替策
事業承継税制の要件を満たせない、または将来的に継続要件を維持できる自信がない場合は、以下のような代替策も検討されます。
- 株式の一部を第三者(M&A)に譲渡し、残りを親族内で承継する
- 持株会社(ホールディングス化)を設立し、資産管理会社の判定を回避する
- 生前贈与の年間110万円の非課税枠を活用しながら段階的に株式を移転する
特にM&Aによる第三者承継は、後継者不在に悩む中小企業にとって有力な選択肢の一つです。税制の要件を満たすための会社組織の見直しと、M&Aによる売却検討を並行して進める企業も増えています。制度の詳細な要件や最新の申告手続きについては、国税庁の公表資料も併せて確認することをおすすめします。
事業承継税制は税負担を大きく軽減できる制度ですが、要件確認や継続報告を誤ると猶予が取り消され、猶予されていた税額に加えて利子税が発生するリスクもあります。自社の状況に応じて、税理士やM&A仲介会社などの専門家に早い段階で相談することが、結果的に最も確実な進め方といえるでしょう。
よくある質問
- Q. 事業承継税制の要件はどこで最終確認すべきですか。
- A. 制度の詳細な要件や最新の適用期限は改正で変わることがあるため、国税庁や中小企業庁の公式サイト、または認定支援機関である税理士に直接確認することをおすすめします。
- Q. 資産管理会社と判定されると事業承継税制は使えませんか。
- A. 特定資産の割合がおおよそ70%を超えると原則対象外ですが、常時使用従業員が5人以上いるなど一定の事業実態がある場合は例外として対象になる余地があります。個別の資産構成の精査が必要です。
- Q. 要件を満たせない場合、事業承継税制以外の方法はありますか。
- A. 持株会社化による資産管理会社判定の回避や、生前贈与の非課税枠を活用した段階的な株式移転、第三者へのM&Aによる承継など複数の代替策があります。



