事業承継と債務免除|後継者の借金はどうなる2026
この記事の要点
- 債務免除益は法人税の課税対象になり得るため免除=無税ではない
- 交渉や再生手続きの費用は数十万〜数百万円程度と幅がある
事業承継における「債務免除」とは何か
事業承継で金融機関からの借入金が後継者の重荷になる場合、債権者が債務の全部または一部を免除する「債務免除」という手段が使われることがあります。ただし免除された金額は原則として会社側で「債務免除益」という利益に計上され、法人税の課税対象になる点に注意が必要です。
債務免除は後継者個人の借金を消す制度ではなく、会社が負っている借入金そのものを金融機関や取引先が放棄する行為を指します。経営者保証(個人保証)の扱いとは別の話であるため、まずこの2つを混同しないことが重要です。
経営者保証と債務免除は別物
中小企業の事業承継では、先代経営者が会社の借入に個人保証をつけているケースが多く見られます。後継者がこの保証をそのまま引き継ぐと、万一会社が返済できなくなった場合に後継者個人の財産が差し押さえられるリスクが残ります。
こうした保証の引き継ぎを避けるための仕組みが「経営者保証ガイドライン」です。このガイドラインは法的な免除制度ではありませんが、一定の条件を満たせば金融機関との交渉により保証を外す、あるいは後継者には引き継がせないという運用が可能になります。中小企業庁でもガイドラインの活用を促す案内が出されています。
保証解除の主な条件
金融機関が保証解除や保証の引き継ぎ回避に応じやすいとされる条件には、おおむね次のようなものがあります。
- 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている
- 会社の財務内容が健全で、返済原資が安定している
- 後継者が保証なしでも返済継続できると判断できる情報開示がある
これらはあくまで交渉材料であり、必ず保証が外れると保証されているわけではありません。金融機関ごとに判断基準は異なります。

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無料で記事を作る →会社の債務そのものを減らす方法
後継者に引き継ぐ借入金の残高自体を減らしたい場合、主に以下のような手段が検討されます。
- 私的整理・準則型私的整理手続き:裁判所を介さずに金融機関と合意し、返済条件の変更や一部債務の免除を行う方法です。中小企業の事業再生でよく使われます。
- DES(デット・エクイティ・スワップ):借入金を資本(株式)に転換し、返済義務そのものをなくす方法です。
- 第二会社方式:採算部門を新会社に引き継ぎ、不採算部門と過剰債務は旧会社に残して整理する方法です。
これらはいずれも専門的な再生スキームであり、税理士や弁護士、中小企業再生支援の専門機関との連携が前提になります。安易に自社だけで進めると、後述する税務上の思わぬ負担が発生することがあります。
債務免除で起こりやすい失敗
債務免除や債務整理を伴う事業承継では、次のような失敗がしばしば起こります。
- 債務免除益に対する法人税の負担を見落とし、免除を受けたのに資金繰りがかえって悪化するケース
- 欠損金(過去の赤字)を活用すれば債務免除益と相殺できる場合があるが、繰越期間や金額の上限を確認せずに計画を立ててしまうケース
- 経営者保証の解除交渉を後継者一人で進め、金融機関との情報開示が不十分なまま交渉が長期化するケース
- 私的整理の手続き費用や専門家報酬を事前に見積もらず、想定より数百万円単位の追加コストが発生するケース
債務免除益への課税は、繰越欠損金との相殺や、会社更生・民事再生といった法的整理の枠組みを使うことで軽減できる場合があります。該当するかどうかは会社の決算状況によって大きく変わるため、具体的な税額の試算は税理士に確認する必要があります。国税庁の法人税に関する情報も参考になります。
事業承継税制との関係
「事業承継税制」は自社株式の贈与税・相続税の納税猶予・免除を受けられる制度であり、会社の借入金の債務免除とは制度の対象が異なります。この2つも混同されやすいポイントです。
事業承継税制を使えば後継者が株式を取得する際の税負担は抑えられますが、会社自体の借入金は別途、通常の返済や交渉で対応する必要があります。両方の制度を組み合わせて検討する場合は、それぞれの適用要件を個別に満たす必要がある点を押さえておきましょう。
相談先の選び方
債務免除や経営者保証の解除を検討する場合、次のような相談先があります。
- メインバンクなど取引金融機関(まずは現状の相談から)
- 顧問税理士・弁護士
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 中小企業再生支援協議会
借入規模がおおむね数千万円を超える場合や、複数の金融機関から借入がある場合は、一つの窓口だけで判断せず、再生支援の専門機関を交えて全体像を整理することが望ましいとされています。費用感は案件の複雑さによって数十万円から数百万円程度まで幅があり、着手前に見積もりを取ることが欠かせません。
まとめ
事業承継における債務免除は、会社の借入金を軽減する有効な手段になり得る一方、債務免除益への課税や金融機関との交渉プロセスなど、慎重に進めるべき論点が複数あります。経営者保証の解除とあわせて、早い段階で税理士・弁護士・事業承継の専門機関に相談し、自社の状況に合った方法を選ぶことが後継者の負担軽減につながります。
よくある質問
- Q. 事業承継で借金はどうなりますか?
- A. 会社の借入金は原則として後継者が引き継ぐ会社に残ります。個人保証については経営者保証ガイドラインの活用により、後継者への引き継ぎを回避できる場合があります。
- Q. 債務免除を受けると税金はかかりますか?
- A. 免除された金額は原則として法人の利益(債務免除益)として法人税の課税対象になります。繰越欠損金との相殺で負担が軽減される場合もあるため、税理士への確認が必要です。
- Q. 経営者保証は必ず外せますか?
- A. 必ず外れるわけではありません。法人と個人の資産分離や財務の健全性など一定の条件を満たした場合に、金融機関との交渉で保証解除や引き継ぎ回避が認められることがあります。