
事業承継対策の進め方5ステップ!時期や税金対策を解説
事業承継の対策は、現経営者の健康状態や会社の財務状況を「見える化」し、後継者候補の選定と育成を進めることから始まります。具体的には、自社株の評価額引き下げなどの税金対策や、関係者の合意形成、M&Aを含めた承継手法の決定を、5〜10年の長期計画で実行することが重要です。
本記事では、事業承継対策を成功に導く具体的な手順や税金対策、よくある失敗例について、専門知識を交えて詳しく解説します。
なぜ事業承継対策が今すぐ必要なのか
経営者の高齢化と後継者不足の現状
日本の多くの中小企業において、経営者の平均年齢は上昇傾向にあります。後継者が決まっていないまま経営者が突然倒れた場合、事業継続が困難になり、従業員の雇用や取引先との関係が維持できなくなるリスクがあります。早期に対策を始めることで、不測の事態にも対応できる体制を整えられます。
準備不足による黒字廃業を防ぐため
業績が好調であるにもかかわらず、後継者が見つからないために廃業を選択する「黒字廃業」が増加しています。早期から事業承継対策に取り組むことで、親族や従業員への承継だけでなく、社外への第三者承継(M&A)という選択肢も視野に入れることができ、貴重な事業資産を次世代に遺せます。
株式や資産の分散を防ぐため
事前の対策を怠ると、経営者の相続発生時に自社株や事業用資産が複数の相続人に分散してしまうリスクがあります。議決権が分散すると、後継者が迅速な意思決定を行えなくなり、経営の停滞を招きます。遺言書の作成や生前贈与による対策が不可欠です。
事業承継対策の具体的な進め方5ステップ
事業承継対策は、計画的に進めることでトラブルを回避できます。ここでは基本となる5つのステップを解説します。
ステップ1:現状の把握(自社の見える化)
まずは自社の経営資源や財務状況、経営者自身の資産を正確に把握します。自社株の評価額、借入金や債務保証の有無、知的財産やノウハウなどの無形資産をリストアップしましょう。この段階で、会社の強みと弱みを整理することが重要です。
ステップ2:後継者候補の選定と意思確認
次に、誰に事業を引き継ぐかを検討します。候補者は主に「親族」「社内(役員・従業員)」「社外(M&Aなど)」の3つに分類されます。候補者を選定したら、本人の意思を確認し、承継に対する同意を得るプロセスを進めます。
ステップ3:事業承継計画書の作成
承継の時期や具体的な手順をまとめた「事業承継計画書」を作成します。計画書には、今後5〜10年間の売上目標や、後継者への権限移譲のスケジュール、自社株の移転時期などを具体的に書き込みます。計画を作ることで、関係者全員が同じゴールを共有できます。
ステップ4:後継者の育成と関係者の合意形成
後継者が決定したら、実際の経営業務に携わらせて育成を行います。他社での勤務経験を積ませたり、社内の主要な部門を経験させたりします。同時に、役員や従業員、取引先、金融機関に対して、後継者の紹介と承継方針の説明を行い、理解を得ておきます。
ステップ5:株式・資産の移転と実行
最終段階として、自社株や事業用資産を後継者に移転します。親族内承継であれば贈与や相続、社内承継やM&Aであれば売買などの手法が用いられます。税負担を軽減するための特例制度の活用も、この段階で実行します。
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無料で記事を作る →事業承継における3つの選択肢と特徴
事業承継の手法には、大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれのメリットとデメリットを理解し、自社に最適な方法を選択しましょう。
<table>
<thead>
<tr>
<th style="text-align: left;">承継手法</th>
<th style="text-align: left;">メリット</th>
<th style="text-align: left;">デメリット</th>
</tr>
</thead>
<tbody>
<tr>
<td style="font-weight: bold;">親族内承継</td>
<td>内外の理解を得やすく、早期から後継者教育ができる</td>
<td>親族内に適任者がいない場合があり、相続争いのリスクがある</td>
</tr>
<tr>
<td style="font-weight: bold;">社内承継(役員・従業員)</td>
<td>業務や社風を熟知しており、経営の連続性を保ちやすい</td>
<td>後継者に株式を買い取る資金力が不足していることが多い</td>
</tr>
<tr>
<td style="font-weight: bold;">社外承継(M&A)</td>
<td>広く買い手を探せるため、後継者不在でも事業を存続できる</td>
<td>希望条件に合う買い手が見つかるとは限らず、交渉に時間がかかる</td>
</tr>
</tbody>
</table>
知っておくべき税金対策と公的支援制度
自社株の評価額引き下げ対策
自社株の評価額が高い時期に贈与や相続を行うと、多額の税金が発生します。対策として、一時的に役員退職金を支給して利益を圧縮したり、設備投資を行ったりすることで、株価を引き下げる手法があります。ただし、不自然な利益圧縮は税務リスクを伴うため注意が必要です。
事業承継税制(特例措置)の活用
事業承継税制とは、後継者が贈与や相続により取得した非上場株式に係る贈与税・相続税の納税が猶予または免除される制度です。この制度を利用するには、一定の要件を満たした上で、都道府県知事への申請など所定の手続きが必要となります。制度の詳細は、中小企業庁の公式情報をご確認ください。
経営承継円滑化法による金融支援
事業承継時には、株式の買い取りや納税資金など、多額の資金が必要になることがあります。「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」に基づき認定を受けることで、日本政策金融公庫などから融資や保証の特例措置を受けられる場合があります。資金繰り対策として、日本政策金融公庫などの支援メニューを確認しておくとよいでしょう。
事業承継対策でよくある3つの失敗例
失敗例1:準備開始が遅く、健康状態の悪化でM&Aを急いだ
現経営者が70代後半になってから事業承継を考え始めたものの、突然の病気で入院。十分な準備期間がないまま急いでM&Aを進めた結果、買い手からの買い叩きに遭い、希望額の半額以下で売却せざるを得なくなった事例があります。準備期間は最低でも5年は見積もるべきです。
失敗例2:後継者以外の親族への配慮を怠り、相続争いが発生
自社株のすべてを後継者である長男に生前贈与したものの、現経営者の没後、他の兄弟から「遺留分(法律上最低限保障された遺産の取り分)」を主張され、裁判に発展。最終的に株式を一部売却して解決金に充てることになり、会社の経営権が不安定になりました。
失敗例3:社内承継で後継者の資金調達ができず頓挫
優秀な役員に会社を譲ることで合意していたものの、その役員に自社株を買い取る資金がありませんでした。金融機関からの融資も、個人保証のハードルが高く断念。結果として承継は頓挫し、数年後に会社は廃業に追い込まれました。社内承継における資金調達スキームの検討は必須です。
まとめ:早期の対策開始が成功の鍵
事業承継対策は、単なる手続きの履行ではなく、企業の未来を守るための経営戦略そのものです。自社の現状把握から株式の移転までには、多くの時間と専門的な知識が必要とされます。
「まだ若いから」「後継者が決まってからでいい」と先送りにせず、まずは専門家への相談や、事業承継計画書の作成など、できることから一歩を踏み出してみましょう。早期の準備こそが、従業員や取引先、そして経営者自身のハッピーリタイアを実現する唯一の方法です。実際の税務や法的手続きの実行にあたっては、必ず税理士や弁護士などの専門家に相談し、最新の法令に則って進めてください。
2026年最新動向:事業承継対策の追加ポイント
2026年に向けて、事業承継税制の特例措置の適用期限や後継者要件の見直しが進んでおり、最新の制度情報を早めに確認することが重要です。特に特例承継計画の提出期限や納税猶予制度の改正動向は毎年変化するため、顧問税理士や事業承継の専門家と定期的に情報をアップデートする体制を整えましょう。また、M&Aによる第三者承継を選択する中小企業が増加しており、後継者不在の場合は早期にM&A仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターへ相談することで選択肢が広がります。さらに、デジタル化の進展により、株価算定や財務資料の整理にクラウド会計ソフトを活用する企業も増えており、事前準備の効率化が図れます。5ステップの計画立案時には、最新の補助金・助成金情報も併せて確認し、資金面での負担軽減策を積極的に活用することをおすすめします。
よくある質問
- Q. 事業承継の対策は、何歳頃から始めるべきですか?
- A. 経営者が60歳を迎える頃、または承継を希望する時期の5〜10年前から準備を始めるのが一般的です。後継者の育成や自社株の評価額引き下げ対策には、長期的な計画と実行期間が必要となるためです。
- Q. 後継者がいない場合、どのような対策がありますか?
- A. 親族や社内に適任者がいない場合は、第三者への会社売却(M&A)が有力な選択肢となります。M&Aにより、創業者の創業者利益の確保と、従業員の雇用継続を同時に実現することが可能です。
- Q. 事業承継税制を利用する際の注意点は何ですか?
- A. 事業承継税制は納税が猶予・免除される強力な制度ですが、承継後も一定期間、雇用の維持や代表者の留任など厳しい要件を満たし続ける必要があります。要件を外れると、猶予された税金を一括納付しなければならないリスクがあります。



