事業承継は何年かかる?準備期間の目安と進め方
この記事の要点
- 親族内承継はおおよそ10年前後かかる傾向がある
- M&Aによる第三者承継は1〜3年程度で完了することもある
- 準備着手は経営者60歳前後からが望ましいとされる
事業承継は何年かかる?結論は5〜10年が目安
事業承継の準備には、おおよそ5〜10年かかるのが一般的です。後継者の育成や関係者との調整、税務面の対策まで含めると長期戦になりやすく、中小企業庁も経営者の年齢や引退時期から逆算した早めの着手を呼びかけています。一方でM&Aによる第三者への承継であれば、1〜3年程度で完了するケースもあり、方法によって期間には大きな幅があります。
なぜ事業承継には時間がかかるのか
事業承継が長期化しやすい理由は、単に「後継者を決める」だけでは終わらないからです。主に次の3つの工程が絡み合っています。
- 経営者本人が引退時期や承継方針を固める意思決定の期間
- 後継者の選定と、経営に必要な知識・人脈・信用を育てる教育期間
- 株式の移転や相続・税務対策など、法務・財務面の手続き期間
これらは並行して進められる部分もありますが、後継者教育だけでも5年前後かかると言われており、関係者間の調整が難航すれば10年を超えることも珍しくありません。
親族内承継は本当に時間がかかるのか
親族内承継は、他の方法と比べて準備期間が長くなりやすい傾向があります。子どもや親族に経営を引き継ぐ場合、後継者が若いうちから社内の業務を経験させ、取引先や金融機関との関係を少しずつ引き継いでいく必要があるためです。
一般的な流れとしては、以下のようなステップを踏みます。
- 後継者候補の選定(経営者が50代〜60代で着手することが多い)
- 他社での勤務経験や社内での現場経験を積ませる期間(3〜5年程度)
- 役員就任など経営への関与を段階的に深める期間(2〜3年程度)
- 株式移転・相続対策・税務対策の実行(数年単位)
このように積み上げると、着手から完了まで10年前後かかることも想定しておく必要があります。経営者の引退時期が明確に決まっていない場合、後継者教育が後回しになり、結果として承継全体が遅れるというケースがあります。
従業員承継はどのくらいの期間で進むのか
従業員承継は、社内の役員や幹部社員に経営を引き継ぐ方法です。社内の事情をすでに理解しているぶん、親族内承継よりは教育期間を短縮できる場合がありますが、株式を買い取るための資金調達が課題になりやすく、この資金計画の調整に時間がかかることがあります。
資金調達には金融機関からの融資を活用するケースが多く、日本政策金融公庫のような公的機関の融資制度を検討する企業も見られます。資金計画の策定から実行まで含めると、おおむね3〜7年程度を見込んでおくと無理のないスケジュールになりやすいでしょう。
M&Aによる第三者承継は短期間で終わるのか
M&Aによる第三者への承継は、親族内・従業員承継と比べて期間を大幅に圧縮できる可能性があります。後継者を一から育てる必要がなく、すでに経営能力を持つ企業や個人に引き継ぐためです。

一般的なM&Aのプロセスは次のような流れになります。
- 仲介会社や専門家への相談、企業価値の簡易評価(1〜3か月程度)
- 買い手候補の選定・交渉(3〜6か月程度)
- デューデリジェンス(買収監査)と条件調整(1〜3か月程度)
- 契約締結・クロージング(1か月前後)
順調に進めば1年前後で成約に至ることもありますが、希望条件に合う買い手が見つからず、2〜3年かかるケースもあります。業種や企業規模、財務状況によって交渉の難易度が変わるため、「必ず短期間で終わる」と断定することはできません。
準備を始めるタイミングはいつが適切か
事業承継の準備は、経営者が60歳を迎える前後から検討を始めることが望ましいとされています。中小企業庁の資料でも、経営者の引退年齢が70歳前後に集中している一方で、承継の準備に着手していない企業が一定数存在することが課題として指摘されています。
準備が遅れることで起こりやすい失敗には、次のようなケースがあります。
- 後継者候補はいたものの、育成期間が十分に取れず経営を任せる段階で混乱が生じたケース
- 経営者の急な体調不良により、承継方針が固まらないまま事業継続が困難になったケース
- 株価が想定より上昇し、相続税や贈与税の負担が重くなってから対策を始めたケース
このような事態を避けるためにも、具体的な引退時期が決まっていなくても、早い段階で後継者候補の洗い出しや資産状況の整理に着手しておくことが重要です。
事業承継税制は期間短縮に役立つのか
事業承継にともなう税負担を軽減する制度として、事業承継税制(法人版・個人版)があります。一定の要件を満たすことで、非上場株式等にかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除される仕組みです。この制度を活用する場合も、都道府県知事の認定申請や計画書の提出など事前準備が必要になるため、利用を検討するならできるだけ早めに専門家へ相談しておくことが望ましいでしょう。制度の詳細や適用要件は、中小企業庁の公式情報で随時更新されているため、最新の内容を確認することをおすすめします。
まとめ:期間は方法によって異なるが早期着手が鍵
事業承継にかかる期間は、親族内承継で10年前後、従業員承継で3〜7年程度、M&Aによる第三者承継で1〜3年程度と、方法によって大きく異なります。いずれの方法を選ぶ場合も、準備の着手が遅れるほど選択肢が狭まり、希望する条件での承継が難しくなる傾向があります。自社の状況に合った承継方法や具体的なスケジュールについては、税理士や中小企業診断士、M&A仲介会社など専門家に早めに相談し、個別の事情を踏まえた計画を立てることが大切です。
よくある質問
- Q. 事業承継の準備は何歳から始めるべきですか?
- A. 明確な年齢の決まりはありませんが、経営者が60歳前後を迎える頃から後継者候補の洗い出しや資産状況の整理に着手するケースが多く見られます。引退時期が未定でも早めの検討が望ましいとされています。
- Q. M&Aなら必ず短期間で承継できますか?
- A. 短期間で成約するケースもありますが、買い手候補が見つからなかったり条件調整が難航したりすると2〜3年かかることもあり、必ず短期間で終わるとは限りません。
- Q. 事業承継税制を使えば期間を短縮できますか?
- A. 税制の活用は税負担の軽減が主な目的であり、承継期間そのものを短縮する制度ではありません。申請手続きには準備期間が必要なため、早めに専門家へ相談することが望ましいです。
