事業承継は何から始める?最初の一歩と進め方2026
この記事の要点
- 最初の一歩は決算書と株式構成の現状把握から
- 後継者打診は経営者60代前半までに行うのが望ましい
- M&A検討は成約まで半年〜2年かかるため早期の情報収集が有効
事業承継は何から始める?答えは「現状把握」と「早期相談」
事業承継を何から始めるべきか迷ったら、最初にやるべきことは自社の現状把握(会社の資産・負債・株式構成の整理)と、公的相談窓口や専門家への早期相談の2つです。経営者の年齢が60代後半に差しかかっている場合、準備期間は5〜10年程度かかることが多く、着手が遅れるほど選択肢が狭まります。
事業承継の準備は「現状把握」「後継者の方向性の検討」「専門家への相談・計画策定」という3段階で進めるのが一般的です。この記事では、それぞれの段階で具体的に何をすべきか、よくあるつまずきとあわせて解説します。
なぜ「何から始めるか」で迷う経営者が多いのか
事業承継は税務・法務・経営権・人間関係が絡み合うため、着手順を誤ると手戻りが発生しやすいテーマです。たとえば後継者候補への打診を先行させてしまい、その後に会社の財務状況を確認したところ債務超過に近い状態が判明し、交渉が振り出しに戻るというケースがあります。また、相続人が複数いる場合に株式の分散状況を把握しないまま承継を進め、後継者の議決権比率が過半数に届かず経営判断が滞るというケースも見られます。
中小企業庁の資料でも、経営者の高齢化が進む一方で後継者未定の企業が一定割合存在することが指摘されており、準備の遅れは中小企業全体の課題とされています。何から着手するかを明確にすることで、こうした手戻りや機会損失を避けやすくなります。

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ステップ1:自社の現状を数字で把握する
最初に行うべきは、会社の実態を客観的な数字で把握することです。具体的には以下の項目を整理します。
- 直近3〜5期分の決算書(売上・利益・借入金残高)
- 株式の保有者と保有比率の一覧
- 自社株式のおおよその評価額
- 経営者個人の資産・保証債務の状況
このうち自社株式の評価額は、相続税や贈与税の試算に直結するため早めの把握が重要です。評価方法は会社の規模や業種によって異なり、具体的な評価額や税額は国税庁の情報や税理士への確認が必要になります。この段階で「思ったより株価が高く、後継者の納税資金が不足する」という事態が判明することも少なくありません。
ステップ2:後継者の方向性を検討する
現状把握と並行して、誰に継がせるかの方向性を検討します。選択肢は大きく3つです。
- 親族内承継(子や親族への承継)
- 親族外承継(役員・従業員への承継)
- 第三者承継(M&Aによる売却)
中小企業庁の調査などでは、近年は親族外への承継やM&Aを選ぶ企業の割合が増加傾向にあるとされています。親族に後継者候補がいない、あるいは本人に継ぐ意思がない場合、早い段階でM&Aという選択肢を視野に入れることで、準備期間を無駄にせずに済みます。実際には「後継者候補の子どもに相談したのは経営者が70代になってから」というように、打診自体が遅れるケースが多く見られます。打診は60代前半までに一度行っておくことが望ましいと考えられます。
ステップ3:専門家に相談し、計画を文書化する
方向性が固まったら、税理士・中小企業診断士・M&A仲介会社など専門家に相談し、承継計画を具体的なスケジュールに落とし込みます。計画には以下を含めるのが一般的です。
- 承継までの目標年数(5年後・10年後など)
- 株式移転の方法(贈与・売却・相続)と概算の資金計画
- 後継者教育の内容と期間(他社での就業経験、役員としての実務経験など)
- 取引先・金融機関への説明時期
公的な相談窓口としては、各都道府県に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターのような機関があります。相談は無料で利用できる場合が多く、M&Aを含めた選択肢を中立的な立場で整理してもらえる点がメリットです。まずは中小企業庁の案内から、自社が利用できる支援制度を確認しておくとよいでしょう。
何から始めるかを誤ると起きやすい失敗
事業承継の着手順を誤ると、次のような失敗につながりやすくなります。
- 後継者への権限移譲が遅れる:社長交代の発表だけ先行し、実質的な経営判断権限を移さないまま数年が経過し、従業員や取引先が後継者を軽視する状態が固定化するケースがあります。
- 納税資金の準備不足:自社株評価額の把握が遅れ、相続発生時に多額の相続税が発生し、納税のために事業用資産を売却せざるを得なくなるケースがあります。
- M&A検討の着手が遅すぎる:後継者不在に気づいてから買い手探しを始めても、業績が悪化していると交渉条件が不利になりやすく、着手は業績が安定しているうちに行うことが望ましいとされています。
これらはいずれも、最初の現状把握と早期相談を怠ったことが遠因になっているケースが多いといえます。
事業承継とM&Aはどちらを先に検討すべきか
親族内に後継者候補がいない、または継ぐ意思がない場合、M&Aによる第三者承継は有力な選択肢の一つです。ただし、M&Aは買い手探しから成約まで半年〜2年程度かかることが多く(買い手候補の選定、デューデリジェンス、契約交渉などの工程を要するため)、親族内承継の可能性を探るのと並行して情報収集を始めても遅くはありません。M&A仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターに相談することで、売却の可能性やおおよその企業価値のレンジを早い段階で知ることができます。
まとめ:最初の一歩は「現状把握」と「相談予約」
事業承継を何から始めるかで迷ったら、まずは自社の決算書と株式構成を整理し、公的支援機関や専門家への相談を予約することから始めるのが現実的な第一歩です。方向性(親族内・親族外・M&A)は現状把握の後に検討しても遅くありません。準備には数年単位の時間がかかるため、「まだ早い」と感じる段階から着手しておくことが、後々の選択肢の広さにつながります。最終的な税務・法務の判断は、税理士や弁護士など専門家の確認を経て進めてください。
よくある質問
- Q. 事業承継の準備はいつから始めればよいですか?
- A. 経営者の年齢や会社の規模にもよりますが、準備には5〜10年程度かかることが多いため、60代に入った時点、あるいはそれ以前から着手することが望ましいとされています。
- Q. 後継者が決まっていない場合は何から手をつけるべきですか?
- A. まず自社の現状(財務状況や株式構成)を把握したうえで、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的窓口やM&A仲介会社に相談し、親族外承継やM&Aを含めた選択肢を整理することから始めるとよいでしょう。
- Q. 相談は無料でできますか?
- A. 都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターなど公的機関では無料相談を実施している場合があります。民間の専門家やM&A仲介会社の場合は料金体系が異なるため、事前に確認することをおすすめします。
